医療PR事例#6: イオンモールなど大型商業施設が医療テナントを積極導入

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イオン株式会社など大手流通業者は経営する大型商業施設内、あるいは隣接した場所に医療モールを設けて、そこに医療テナントを積極的に誘致し医療が受けられる大型商業施設を増加させている。

小売業全般がデフレやモノ余りの中で伸びない個人消費、及び郊外型の大型商業施設を運営する大手流通業者においては、高齢化社会の到来による高齢者を郊外型店舗へ誘店すること厳しさがますます見込まれる。そんな中、利用客の利便性を向上させるとともに、医療目的の来場者がついでに買い物をすることの売上増や医療モールの導入によって大型商業施設が販売面のみならず、公共性の高い医療の場を同じ場所で提供することで地域社会に貢献しているというイメージアップ、そしてそれによって近隣で競合する同じ業態の商業施設との差別化を図ることを目的としている。

一方、医療提供者側も大型商業施設の集客能力=医療受診者の増加は魅力的に映るようで、両者の思惑が一致していることから、今後、急速に増加していきそうである。医療機関を利用する者にとっては、日曜・祭日に病気になると当番医を探し、住所から行き方を調べなければならないなど、大変な手間と時間がかかる。この問題が一気に解決されることだけでも歓迎すべきことであるが、その他に、ついでの買い物ができたり、受診の待ち時間が長くて、かつ病気の状態が軽ければ時間つぶしをしたりするにも便利である。

尚、都市部にはすでに個人医院などが一つのビル、一つの場所に集合して開業しているケースが近年増加してきているが、この考えの延長にあるアイデアである。比較するとその利便性は、大型商業施設内にある方がはるかに高い。

■大型商業施設内の医療モール開設例

・商業施設名:イオンモール春日部
・所在地:埼玉県春日部市下柳420-1
・オープン年月日:2013年3月8日
・診療医院数:3
・診療科:内科・小児科・外科・整形外科・婦人科・皮膚科・眼科・歯科の8科

■その他の直近の医療モール設置大型商業施設

商業施設名/オープン日程
・イオンモ―ルつくば/3月15日
・ボーノ相模大野/3月15日
・イオンモ―ル東久留米/4月23日
・ビオレ姫路/4月30日

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■入居する医療機関側のメリットとリスク

医療機関にとっては、特に新規に病院を開業する場合に大きなメリットを得ることができる。なぜなら医療機関であっても、医院を開業すれば何の努力もなしに開業当初から患者をたくさん集めることは、都市部において競合もありそう簡単なことではないためだ。しかし大型商業施設内に開業すれば、たとえ郊外にある商業施設であっても人口密集地に開業したと同じ恩恵を受けることができる。またPR告知に関しては、その施設の利用客だけに絞り込めば良いので効率的である。

しかし、一方でその施設が近隣の商業施設との競争に負けると客足=患者数が減少し、医院を開業した施設が郊外型であればあるほど、医療機関の努力だけでは患者を集めることが難しくなるリスクが生じる。具体的に、どの商業施設を選択して出店するかというマーケテティング戦略が必要なのは間違いなさそうだ。

(文・神戸のりこ 構成・吉池理 MBC医療経営ニュース編集部)