医療PR事例#9: 販売促進とCSRを兼ねた糖尿病が原因の疼痛啓発キャンペーン

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塩野義製薬株式会社と日本イーライリリー株式会社の両社は合同で、「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」に関する啓発キャンペーンが開始されました。両足に痛みを持っている糖尿病患者の多くは、糖尿病が原因でその痛みが生じていることを知りません。そのため主治医に相談して治療を受けることがなく、治療の機会を失っていることから、キャンペーンによってこのことを啓発する目的があります。さらに両社にはその啓蒙に伴い治療薬の売上を伸ばすとともに、製薬メーカーとしての社会的な評価を高めることが狙いとなります。

■啓発キャンペーンの実施の背景

両者が行ったオンライン調査で、両足に痛みを有している糖尿病患者の74%は、その原因を認知せず、56%は足の痛みについて、原因が分からないので誰に相談していいか分からいなどの理由で積極的に医師に相談をしていなかったことが判明。

糖尿病性神経障害に伴う疼痛は、末梢神経または脊髄神経の機能的異常による痛みであるため、その痛みは3ヵ月以上持続することが多く、しばしば難治性の慢性疼痛となります。

■啓発キャンペーン概要

<開始時期>
2013年6月3日より

<啓発方法>
小冊子やポスターなどの配付

<啓発キャラクターに夏目漱石を採用>
本キャンペーンのキャラクターに夏目漱石を採用。
夏目漱石は、晩年、糖尿病を患い「痛みがあり座って居られない」、「痛みで眠れない」など当時解明されていなかった「謎の痛み」に苦しんでいたといわれています。

<医療従事者へも啓発>
糖尿病患者だけでなく、医療従事者に対しても患者の症状に関心を持ち、コミュニケーションを密にとることで治療促進できるように啓発されます。

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企業が社会的責任(CSR)を負うことはもはや常識となり、利益だけをあからさまに追うような企業はいずれ消費者の支持を失うことになるでしょう。そのため多くの企業は、CSRを内外へ積極的にPRすることをないがしろにはできない時代・状況が続いています。

しかし不況下では、事業損益などに直接、間接的に全く影響しないようなCSRはできにくい状況となっています。その点で本キャンペーンは、実質的には製品の販売促進でありながら、対象が医薬品ということもあり、またその医薬品を必要とする患者が必要性を認識していないということで販売促進が、イコールCSRを兼ねて企業のイメージアップに津軽と言う一石二鳥の効果をもたらしています。自社のユーザーがどのような状況にあるかを知ることは、非常に重要な販売促進策となるでしょう。両社にとってコスト的には医療従事者だけへの啓発がもっとも費用対効果は大きいと思われますが、あえて広く告知するのは、CSRも意図したものと考えられます。

(文・神戸のりこ 構成・吉池理 MBC医療経営ニュース編集部)